睡眠不足は緊張やあがり症を引き起こす!?
当然と言えば当然なのですが、体調が良い時のほうが緊張しにくいと言えます。
たとえば、頭が痛くて考えがまとまらなかったら、発表するときに緊張してしまうということは考えられますよね。
そもそも体調は、さまざまな能力を発揮するための土台になりますから、最低限のパフォーマンスを発揮するためにも、体調のコントロールは重要です。
体調管理の中でも、睡眠をしっかりとることは特に大切です。
あがり症を克服する上で、なぜ睡眠不足が大敵なのか?
以前「セロトニンを増やす生活習慣~人前で緊張しない自然な方法とは」の記事でも少し書きましたが、睡眠不足になると脳内の副腎皮質ホルモンやアドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されやすくなります。
これらのホルモンは、敵と出会った時など「逃げるか、戦うか」をすぐに判断するような緊急時に分泌されます。
すると、即座にに行動できるように心拍数が上がり、震えや筋肉が硬直するなど、あがっている時と同じ症状が表れます。
これは「ストレス反応」と呼ばれていますが、睡眠不足になるとストレス反応により、体が緊張しやすくなり、あがりやすくなってしまうのです。
ですから、あがり症克服のためには体調管理の中でも、特に睡眠不足の解消が大切になるのです。
自分の睡眠時間は適切なのか?
さて、睡眠が大切と言っても、今のあなたの睡眠時間は果たして適切なのでしょうか?
あなたの睡眠時間が足りているかどうかをチェックする判断基準は3つあります。
- 午前10時~12時に眠気がある
- 夕方に居眠りしてしまう
- 休みの日に、いつもより2時間以上長く眠ってしまう
この3つのどれかに当てはまれば、睡眠不足だと考えられます。
それぞれもう少し説明しておきましょう。
午前10時~12時に眠気がある
この「10時~12時」という時間帯は、だいたい目覚めてから3~4時間経過したぐらいの時間を想定しています。
目覚めて3~4時間後というのは、本来「一番眠くないはずの時間」です。
その時間帯に眠いということは、睡眠が足りていないという証拠です。
夕方に居眠りしてしまう
夕方の居眠りは、夜の睡眠を妨げる大きな要因になります。
夜に満足に眠れていないから夕方に眠くなり、夕方に寝るからまた夜の睡眠に悪影響を及ぼす、という悪循環に陥ってしまいます。
休みの日に、いつもより2時間以上長く眠ってしまう
これは、平日の睡眠が足りないことを意味しています。
この場合の対処法としては、週の真ん中あたりで30分ほど睡眠時間を増やすと良いです。
たとえば、土日が休みの人の場合は、水曜日あたりでいつもより30分早く眠りにつきます。
このように、週の真ん中あたりで睡眠時間を30分ほど増やしておけば、疲れが休みの日まで持ち越されません。
以上、3つの条件に当てはまっている人は、睡眠不足の可能性が高いということになります。
質の良い睡眠を得るための「快眠10箇条」
睡眠不足気味という人は、次の「快眠10箇条」を心がけて生活してみると良いでしょう。
これは、日本睡眠改善協議会の理事長で、医学博士でもある白川修一郎先生が提唱している10箇条です。
- 午前中に日の光を浴びよ
- 食事の時間は一定にせよ
- 運動は夕方に 散歩も良し
- カフェインは寝る3時間前まで
- 酒は寝る3時間前まで
- 寝る2時間前より強い光を避けよ
- 風呂は寝る30分前に
- 寝室は18~26度に保つべし
- 布団でのスマホ・ゲームはご法度
- 寝なきゃと焦るべからず
ちょっと注意が必要なのは、「5.酒は寝る3時間前まで」ですね。
そもそもアルコールには興奮作用があるので、逆に眠れなくなってしまう人たちもいます。
眠れなくなってしまうタイプの人は、なるべくお酒は控えた方が良いでしょう。
また、眠るためにお酒を飲んでいると、量を増やさないと眠れなくなってしまうこともあります。
お酒を飲み過ぎると睡眠が崩壊してしまいますので、くれぐれも飲みすぎには注意しましょう。
他に「9.布団でのスマホ・ゲームはご法度」とありますが、布団の中で本を読むのはOKです。
寝る前の読書が、一種の就眠儀式(条件づけ)になるので、眠りやすくなります。
スマホが睡眠に悪影響なのは、ブルーライトのせいです。
ブルーライトが、睡眠を促進するホルモンである「メラトニン」の分泌を抑えてしまいます。
それに、布団の中だと顔の近くで画面を見ることになるので、脳が興奮してしまい眠れなくなります。
睡眠にまつわるウワサって本当なの?
ところで、巷では睡眠について本当かウソかよくわからない都市伝説のようなウワサを耳にすることがありますよね。
たとえば以下のようなウワサをよく聞きますが、これは本当なのでしょうか?
- 寝だめはできる
- 朝運動すると良く眠れる
- 寝る前にホットミルクを飲むと良く眠れる
それでは、一つずつ見ていきましょう。
寝だめはできる
これは完全にウソですね。
寝だめはできません。
長く寝るのは、睡眠不足を解消しているだけで、長く寝るとまた夜に眠れなくなるだけです。
結局、睡眠時間が不規則になってしまい、睡眠の質が低下してしまうことになります。
朝運動すると良く眠れる
これは半分本当です。
運動すれば良く眠れるのは事実なのですが、朝よりも夕方に運動する方が効率よく眠れます。
睡眠中は、体温が下がらないと質の良い睡眠がとれません。
体温は一日のうちで夕方が一番高いので、夕方に運動すると体温のメリハリがはっきりします。
そうすると、夜、体温が下がりやすくなり、質の良い睡眠がとれるようになります。
朝の運動も良いのですが、朝に激しい運動をすると、血圧が急激に上がりやすくなります。
その場合、突然死の危険性も出てきてしまいます。
血圧が高い人や、心臓に何らかの問題がある人は、朝の激しい運動はやめておいた方が良いでしょう。
朝に運動をするなら、負荷の少ない動きで体を少し温めてから行ってください。
寝る前にホットミルクを飲むと良く眠れる
これもよく聞きますね。
私も昔、眠れない時にやった覚えがあります。
たしかに、牛乳には睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となる「トリプトファン」が含まれているので、睡眠にも効果があると言えばあります。
ただし、睡眠に直接効果を及ぼすためには、毎晩100リットルものホットミルクを飲まなければなりません。
そんなに飲めるわけがありませんので、これも実質的には「効果ナシ」ということになります。
巷にはウソかホントかわからないようなウワサが、まことしやかに出回っていますのでお気を付けください。
短時間睡眠って可能なの?
実はもう一つ気になるウワサに、「短時間睡眠は可能である」というものがあります。
- 深い睡眠なら短時間でも大丈夫
- 90分の倍数の睡眠時間(4.5時間)眠れば大丈夫
というのが、短時間睡眠が可能と言われている理由のようです。
「90分の倍数」の根拠としては、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)の周期に関係しているようです。
レムとノンレムの周期が90分ぐらいなので、その周期の境目で起きれば、スッキリ目覚められるという理屈です。
「短時間睡眠が可能かどうか」というのは、以前「あさイチ」という番組で、ある3人の芸人さんを対象にした実験で検証していました。
どんな実験かというと、彼らに90分の倍数の4.5時間睡眠を3日間続けてもらうというものでした。
実験中は、深い睡眠を得るために、先ほどの「快眠10箇条」を守ってもらいます。
さて、その結果はどうだったのでしょうか?
1日目は、3人ともグッスリ眠れて寝起きは良かったのですが、3人中2人は夕方ごろから元気がなくなってきました。
そして、2日目は2人とも4.5時間以上眠ってしまい、あえなくリタイア。
残りの1人は2日目まで元気でしたが、3日目の日中に寝落ちを連発してしまい、リタイアしてしまいました。
実験では「4.5時間では、睡眠時間が足りない」という結論になりました。
4.5時間睡眠ですと、体はどうにか回復できるのですが、脳の回復には足りないそうです。
脳を回復させるには、少なくとも6時間以上の睡眠が必要とのことでした。
レム睡眠とノンレム睡眠の90分周期というのは本当か?
ところで、先ほどお伝えした「レム睡眠とノンレム睡眠の周期90分に合わせて起きれば、目覚めがスッキリする」というのは本当なのでしょうか。
実は、これもいい加減なウワサのようです。
そもそも、レム・ノンレム睡眠の周期は70~110分と、個人差がかなり大きいのです。
さらに、日中の活動量によっても周期は毎日変動するため、計算してもほとんど意味がないそうです。
ショートスリーパーは実在するのか?
それでは、睡眠時間が短くても大丈夫な「ショートスリーパー」という存在もマユツバものなのでしょうか?
ところがこれは本当で、ショートスリーパーと呼ばれる人たちは実際に存在しています。
ただ、200人に1人という少ない割合なので、どうしてショートスリーパーになったのかは未だに解明されていませんが、遺伝や生育環境による影響が大きいと考えられています。
ショートスリーパーの人たちは、子どもの頃から短時間睡眠でも平気な人が多いようです。
そのため、後からショートスリーパーになろうと思ってもなれるものではありません。
それどころか、無理に短時間睡眠を続けようとすると、判断力が低下してしまうので、危険な事態を引き起こしてしまいかねません。
その最たる例が「交通事故」ですね。
短時間睡眠ができれば、時間が有効に使えて良さそうに感じますが、そもそも普通の人には無理だということです。
2014年の厚生労働省の指針によると、成人では6時間以上8時間未満の睡眠時間が推奨されています。
質の良い睡眠を、最低でも6時間以上は確保したいところですね。
しかし、睡眠時間を十分とっているにもかかわらず、朝起きた時に疲れがとれていないことってありませんか?
それは、寝ている時の姿勢に原因があるそうです。
「寝る姿勢」が朝起きたときの疲れを左右する!?
あなたは、ふだん「仰向け」「うつ伏せ」「横向き」のうち、どの姿勢で寝ていますか?
東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生によると、寝ている時の姿勢によって、朝起きた時の疲労度は全く変わってくるそうです。
ちなみに、一番疲れのとれにくい寝方は「仰向け」です。
そして、一番疲れのとれる寝方が、実は「横向き」なのです。
なぜ「横向き」で寝ると疲れがとれるの?
食生活やストレスで疲れがたまっている人も多いでしょうが、その中でも疲れがたまる一番の原因は「イビキ」だそうです。
イビキは、主に仰向けで寝ている時に、重力によって緩んでしまった首の筋肉や脂肪が、気道を狭くすることによって、かいてしまいます。
眠っている間には、呼吸を4000回ぐらいしているのですが、これは4000個の風船を細いストローでふくらませているのと同じ運動量になります。
つまり、イビキをかいている状態とは、眠っていても激しい運動をしているのと同じ状態になり、自律神経もかなり疲れてしまうのです。
だから、眠っている時には呼吸をしやすい向きになり、イビキを解消することが、質の良い睡眠をとる良い方法となります。
イビキを解消できて、一番疲れがとれやすいのが「横向きで寝る」ことなのです。
それでは「仰向け」と「横向き」では、実際にどれくらい疲労度に違いがあるのでしょうか。
「仰向け」と「横向き」の疲労度の違いを検証!
これは「この差って何ですか!?」という番組で、イビキがひどい20~50代の男性5人を対象に行われていた実験です。
彼らの指先に「疲労ストレス測定システム」をつけて、寝る前と起きた時の疲労度を測定してもらいました。
ちなみに「疲労ストレス測定システム」とは、指先から自律神経のバランスを読み取り、疲労度を測定する装置のことです。
基準値「2.0」を超えると、疲労度が高い状態を意味します。
「仰向け」で寝た場合の疲労度は?
まず、実験1日目は「仰向け」の状態で、6時間の睡眠をとってもらいました。
寝る前の疲労度を測定してみると、それぞれ
【3.2】【2.9】【1.4】【2.1】【3.7】
という結果になりました。
5人中4人が基準値2.0を上回っていますので、皆さん少しお疲れのようですね。
仰向けの状態で眠り続けてもらうために、腰の両サイドにテニスボールの入ったウエストポーチをつけてもらいました。
これで寝がえりが打ちづらくなります。
眠りにつくと、早い人では10分後にイビキをかき始めました。
5人が起きるまでに、イビキをかいていた合計時間は、それぞれ
【2時間15分】【1時間33分】【3時間9分】【1時間41分】【1時間25分】
となりました。
6時間の睡眠時間の半分以上イビキをかいている人がいますね。
これではなかなか疲れがとれそうにありませんが、実際の疲労度はどうだったのでしょうか。
寝た後の疲労度を測ってみると、以下のような結果になりました。
(寝る前と寝た後の疲労度の推移を表記しています)
【3.2→4.2】【2.9→4.9】【1.4→6.1】【2.1→3.3】【3.7→5.9】
驚いたことに、5人全員とも寝る前より疲労度が上がっていました。
せっかく眠ったのに、余計に疲れてしまうという残念な結果になりました。
「横向き」で寝た場合の疲労度は?
2日目の実験は「横向き」の状態で、6時間の睡眠をとってもらいました。
寝る前の疲労度をそれぞれ測定しました。
【1.6】【3.2】【2.1】【3.5】【4.2】
1日目と同じく、5人中4人が基準値の2.0を上回っています。
みなさん、相変わらずお疲れのご様子です……。
今回は「横向き」ですので、向きが変わらないように腰の前後にテニスボール入りのウエストポーチを巻いてもらいました。
眠り始めて2時間経過しても、イビキをかいている人はいません。
仰向けの時に比べて、イビキをかいている時間がグッと減りました。
起きるまでにイビキをかいていた合計時間は、それぞれ以下の通りです。
【32分】【0分】【42分】【28分】【16分】
睡眠中、全くイビキをかかなかった人もいますね。
仰向けとはえらい違いです。
それでは、起きた時の疲労度はどうなったのでしょうか。
寝る前と起きた時の疲労度の推移は以下の通りです。
【1.6→0.9】【3.2→1.0】【2.1→0.8】【3.5→2.2】【4.2→1.4】
5人全員とも疲労度が下がっていますね。
仰向けと横向きではここまで疲労度が違ってくるのです。
この実験結果から、横向きで寝た方がイビキをかかず、疲れがとれることが一目瞭然でわかります。
右と左のどちらを下にして寝るといいの?
ところで、横向きで寝た方が疲れがとれるのはわかりましたが、右側を下にして寝た方がいいのでしょうか。
それとも左側を下にして寝た方がいいのでしょうか。
あるいは、どちらでも変わらないのでしょうか?
正解は、右を下にして寝る方が良いそうです。
右側を下にして寝ると、胃の出口が下向きになるため、食べたものがスムーズに流れていきます。
便通も良くなるし、かつ消化も良くなります。
さらに、睡眠の質も良くなりますので、右を下にして寝た方が良いということです。
枕を作るときに、たいていの人は仰向けで作ると思いますが、実際には横を向いて寝た時にしっくりくる枕が睡眠に適しています。
「枕をわざわざ作りに行くのが面倒だ」という人には、横寝専用の枕もありますので、使ってみると良いかもしれません。
それでも目覚めがスッキリしない理由とは?
右側を下にして横向きでイビキをかかなくても、「何か目覚めがスッキリしない」という場合もあるそうです。
その理由として考えられるのは、目覚まし時計の「音」です。
目覚まし時計というのは、たいてい「音」で起きますよね。
大きな音量で起きるということは、「驚かされて起きている」という状態です。
驚かされて起きると、血圧は上がるし、心拍数も上がってしまいます。
また、緊急事態が発生したということで慌ててしまい、結果として熟睡感が大きく下がってしまいます。
本当は、朝、音で起きるのが一番良くありません。
音で起きないとしたら、どうやって起きるのが良いのでしょうか。
一番良いのは、サバンナの動物のように、日の出と日の入りに合わせて生活することです。
つまり、光で起きるということです。
光で起きるメリットとは?
光で起きる場合は、徐々にまぶたの上で光を感じるので、睡眠の深いところから少しずつ浅くなっていきます。
ゆっくりと覚醒に向かいますので、血圧も心拍数も上がることなく、自然な状態で目覚めることができます。
可能であれば、カーテンを開けて寝ると、自然な太陽光で目を覚ますことができますので、理想的な目覚めと言えるでしょう。
しかし、現実にはさまざまな理由でカーテンを開けて眠れないという場合も多いと思います。
その場合には、徐々に明るくなる光の目覚まし時計がお勧めです。
実は私も持っているのですが、intisquare(インチスクエア)という光目覚まし時計です。
この光目覚まし時計は、2500ルクス以上の光量がありますので、太陽光と同等の効果が得られます。
朝に太陽の光を浴びると、セロトニンの分泌が増えてスッキリ目が覚めます。
また、セロトニンは、あがり症などの社会不安を感じている人に改善効果があります。
>>目覚まし時計は”音”から”光”の時代へ!最先端の目覚まし時計とは
さて、今回はあがり症と睡眠についてお伝えしてきましたが、お役に立ちましたでしょうか。
あがり症の克服には、このブログでもお伝えしているとおり、メンタルの改善が最も重要なのですが、それ以前に体調が悪かったら何もなりません。
自分でできる最低限の対策として、体調のコントロール、中でも良質な睡眠をしっかりとることは、あがり症克服にとても大切なことです。
あがり症の体験記事を書いています。
私の失敗体験を、あなたのあがり症改善に役立ててください。